ブックレビュー『BARBARIAN DAYS(』バーバリアンデイズ)』著:ウィリアム・フィネガン 

123です。

ここ最近、本レビュー記事アップしておりませんでした(汗)

まったく読んでいなかったわけでは無く、レビュー書きたかったこちらの本をかみ砕くのに時間がかかってました。

ページ数560ページにも及ぶ、内容たっぷりの自叙伝『BARBARIANN DAYS』

2016年にピューリッツァー賞に受賞したこの本はジャーナリストであると同時に自他ともに認めるSurf bum(サーフィン愛好家)の自叙伝だけにサーフメディア界でも話題になった作品。

読もう読もうと思いつつ手が伸びてませんでしたが、この波の無い時期を利用してなんとか読了。

 

著者のウィリアム・フィネガン

1952年にカリフォルニアで生まれ、幼少期に両親の仕事の都合でハワイ・オアフ島に移住。

子供の頃からサーフィンと文学を愛し、青年期は波を求めて南太平洋、オーストラリア、アジアを旅をしてます。

ジャーナリストとしての仕事についてからも、サンフランシスコやマデイラ島、ニューヨークで波に乗り、60歳を超え愛する家族と生活する中でもサーフィンに対する情熱はそのままな著者ウィリアム・フィネガンの半生が描かれている自叙伝『バーバリアンデイズ』。

この本を読んでの著者のイメージは、表現がとにかく知的で繊細な印象です。ただサーフィンの情熱に関しては正直、常軌を逸しているレベル。著者本人も波を追い続ける自分と、世俗や義務との葛藤などを青年期の場面で描いています。

タイトルではバーバリアン(野蛮人)と少し自分を揶揄する表現??からも自分のサーフィン狂を理解しながらも社会に身を置き、陸と海、現実と情熱、シリアスとクレイジー、相反する二つをバランスよく両立させている人物なんだと感じます。

読み終えたあと、この人こそ真のサーファーだなと思わせてくれます。

個人的に好きな部分抜粋

地酒に酔いながら、珊瑚の破片でボードゲームを楽しむ地元の人々を異世界に入り込むようにして眺めていたときのように、私は何かを学ぶためにここに来ていた。(中略)
アメリカにいた時のような疎外感を味わう事なく、ありのままの自分を受け入れられるようになりたかった。

『バーバリアンデイズ』波を求めて南太平洋 1978年 より

最初のセットの波をキャッチしたが、岩棚のはるか上に身体を持ち上げられて目を丸くした。ドロップは簡単ではなかった。加速は凄まじく、嫌な無重力感を味わう瞬間があった。だが、フェイスは滑らかで、波が崩れきれるあいだに素早くボトムターンを決め、うまく波の斜面を下る時間があった。波はテイクオフセクションから、オウムガイの形を描くような完璧さで綺麗に勢いを小さくしていった。

『バーバリアンデイズ』空にキスするからまって マウイ島 1971年 より

私は、ピーターがその一つ前の波に乗って前に進んだと思っていた。一人でここに残されたくなかった。思い切りパドルをした。波に身体を持ち上げられた。波にレールが絡め取られ、思うように動けない。それでも水を搔き続けた。ピーターの叫び声が聞こえた。姿は見えなかったが「ゴー!ゴー!」と言っているように思えた。波にふるい落とされそうになり、ボードからも滑り落ちそうになった。そのとき、ピーターの叫び声が、「ノー!ノー!」だったことに気づいた。

『バーバリアンデイズ』 咆哮 マデイラ島 1994~2003年 より

123レビュー

一人の男性の、しかも濃い時代と内容を過ごした著者の半生が書き綴られているので分厚い大作になるのは必然。

辞典のような分厚さに戦意喪失しちゃうか心配でしたが、読了しました。

長い内容で時間は要しますが、読み続ける事がまったく苦になりませんでした。

内容多いので、切りが良いようにできるだけ1章ずつ終えるように読み進めました。

1章ずつ時系列順なので読みやすい印象。

サーファーが読むべき内容多々あり

極度のサーフィン愛好家で文学にも精通していた著者ならではの、サーフスポットの情景描写がとにかく素晴らしいです。

文字を通して、行ったことがない世界の名スポットの波を感じることができます。

そしてサーファーなら誰しも一度は経験した事のある良い波に乗った時の高揚や、どうしようもない海への恐怖感、サーファー同士の尊敬や嫌悪感など心理描写も繊細に表現されてます。

でてくる筆者以外のサーファー達のキャラクターの濃さも、読み進める上でいいスパイスになっている気がします。

サーフィンをやったことが無い方は、未知であるサーファーの心情を知る事ができますし、サーファーの方は写真や動画とは違った文章での表現方法に圧倒されると思います。

Googleアース使ってトリップイメージ

カリフォルニア、ハワイ、オーストラリア、インドネシア、アフリカ、サンフランシスコ、マデイラ島など世界の有名サーフスポットを舞台にした内容が濃密に描かれています。

その都度、Googleアースのアプリ使って現地の風景見ながらちょっとしたトリップ感も楽しんでみました。

まだまだコロナ禍で海外トリップは難しいですが、いつかこのポイントに行ってみたなと妄想させてくれます。

最後に

サーフィンがここまで知的で魅惑的に表現された本ってなかなかなんじゃないかと思います。

サーフィンに酔いすぎているサーフィン狂という要素だけでは描けない奥深い表現が至る所にちりばめられています。

読みながら、著者がサーフィンにここまで捧げるのはなぜなのか?

その答えが最後に出てくるんじゃないか?と考えてました。

 

しかし、読み終えたあとは、溢れる情熱に明確な理由は必要なく、ただ夢中になるなにかがあれば打ち込むべきだ。と言われた気がしました。

 

波が無い日や、サーフトリップのお供に読みたい1冊です!




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